5. PDCAとPDSAからOODAへ、そしてその先へ

 品質マネジメントシステムでは、ISO 9001や医療機器の製造に関するISO 13485などで用いられている品質マネジメントの手法であるPDCAサイクルの考え方に基づいています。

 PDCAとは、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)→Plan(計画)…と品質を継続的に改善していく手法です。PDCAサイクルは、しばしば統計的品質マネジメントを提唱したウォルター・アンドルー・シューハート(Walter Andrew Shewhart)からシュハート・サイクルや米国の統計学者であるウィリアム・エドワーズ・デミング(William Edwards Deming)からデミング・ホイール / デミング・サイクルなどと呼ばれることがあります。

 諸説ありますが、日本でこの統計的品質マネジメントに関する講演を依頼されたデミング氏の講演を聴講したある日本人がPDCAを提唱したといわれています[i]。PDCAは、日本が発祥だといえるのです。

このPDCAサイクルによって日本の産業、特に製造業においての品質は格段に向上し、また「改善」をImprovementではなく「KAIZEN」が世界でも通じる日本語として認知されていきました。また、国際標準規格のISO 15883洗浄消毒装置やその規格に基づいて編纂されたDGKH, DGSV®/SGSV and AKIによる医療機器のための自動洗浄および熱水消毒工程におけるバリデーションと日常監視ガイドラインにおいても品質マネジメントシステムを構築し改善を図らなければならない、すなわちISO 9001やISO 13485と同様にPDCAサイクルを用いて改善へのプロセスを組織内で構築することを要求しています。

 1986年にデミングはPDCAの“Check”は”to hold back(食い止める)”の意味になるためCheckでは次の行動へつなげられないといいました。[ii] 1993年にデミングは”Check”を“Study”に修正し「学習」することで製品やサービスのプロセスが改善されるとしPlan(計画)→ Do(実行)→ Study(学習)→ Act(改善)のPDSAを提唱しました。[iii]

しかしながら、PDSAはPDCAの発展として2種類の改善プロセスとして用いられることになりました。製品やサービスのプロセスにおける一貫した継続的な改善を達成するPlan → Do → Check → Act → Plan → Do … の4段階を一貫した継続的な改善を達成する螺旋のような流れの手法として用いられ、PDSAはPlan → Do → Study → Actでは” Study” とは「学び」によって得られたものをAct(改善)へのアプローチのみならず、Plan(計画)やDo(実行)に対しても影響を及ぼしていく手法だとされています。

 

 PDCAは、定型化された生産ラインにおいて、より効果性や効率性、安全性を向上されるアプローチとして有効だと考えられ、PDSAでは学習から得られたデータを計画段階と実行段階での違いを詳細に分析し、さらに改善システムを実行への影響も分析して得られた結果をまた、学びに活かしていくアプローチになります。PDSAは、変化や変更が比較的多い業務に有効であるといわれています。

 品質マネジメントシステムの生産管理としてPDCAやPDSAを用いた手法が認知され、多くの組織で取り入れられてはいますが、実際にこのサイクルがうまく回らない、うまく機能しないという話しを耳にします。

近年、PDCAやPDSAサイクルがうまく機能していないことへの研究がなされ、PDCAやPDSAの他にOODAループ[iv]の必要性が言われるようになりました。

 OODA[v]とは、Observe(観察)、Orient(情勢適応)、Decision(意思決定)、Act(行動)の各段階でのFeedforwardとFeedbackが存在するループ手法で「最良の意思決定」を導く理論として提唱されています。PDCAやPDSAの各段階への移行には、個人や組織の意思決定が伴います。PDCAやPDSAのサイクルがうまく回らない、うまく機能しない理由のひとつに、この意思決定の機能不全があるといわれています。OODAループ理論は、この意思決定に至る場面で特に活かされます。

OODAループは、アメリカ空軍のジョン・リチャード・ボイド(John Richard Boyd)が提唱した理論で軍事作戦や戦闘作戦のプロセスの概念に適用されていました。今では、商業活動や学習過程を理解する上でしばしばこの理論が用いられるようになっています。このアプローチは、生存するために必要な敏捷な行動を起こすために最良で素早い意思決定に至るために有効であるとされ、この理論が一般にも用いられるようになり、PDCAやPDSAの各段階に移行するための意思決定プロセスに応用されはじめました。

 OODAループの各要因と関係性への詳細な内容説明もさることながら、「意思決定」をするのは機械や装置、ISOや各種ガイドラインに準拠した手順でも、ましてや人工知能でもなく「人」やその集団である「人々」によってもたらされます。

品質管理システムを機能させるための手法であるPDCAやPDSA、そして意思決定の手法に用いられるOODAでさえも「人」や「人々」という要因(Factor)が起因していることは避けられない事実であると私たちは考えます。

 SMP Laboratories Japan Co., Ltd.では、品質マネジメントシステムを「安全性」、「有効性」、「信頼性」や「効率性」などを単に測定し、その妥当性を確認や検証することだけでとらえるのではなく、患者やその家族、医療機関や生命関連企業などの利害関係者のみならず個々人の価値感や時代とともに変遷する社会的価値観を「医療」というテーマを通じた品質マネジメントシステムの本質を如何に共有し、また受容することが可能となるのかを教育やトレーニングの形で提供しています。

[i] “統計的管理手法の歴史”. 日本科学技術連盟. http://www.juse.or.jp/statistical/history/(統計管理手法参照)

[ii] Deming, W.E. 1986.Out of the Crisis. MIT Press. Cambridge, MA, p88.

[iii] Deming, W.E. 1993.The New Economics. MIT Press. Cambridge, MA. p135.

[iv] Boyd, John R.1976. Destruction and Creation (PDF). U.S. Army Command and General Staff College.

[v] Kent B.2018. Observe, Orient, Decide, Act: A Subjectivist Model of Entrepreneurial Decision Making. JOURNAL OF MANAGERIAL ISSUES Vol. XXX. p349.

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